話数単位で選ぶ、2022年のアニメ10選

 2022年も色々アニメを見たり見なかったりしたので、その記録として自分も書いてみました。ブログを書くのに対して不慣れな所があるので、若干変な書き方してても見逃してほしいです。

 

 

※スタッフクレジットは各話EDクレジットより脚本・絵コンテ・演出・作監等のみ記載

 

CUE!  第24話「はじまりのおわり」

脚本:浦畑達彦、片貝慎

絵コンテ・演出:西邑大輔 助監督:西邑大輔、加藤もえ

作画監督:臼井里江、西見昌一郎、酒井美佳、吉田肇、東美帆、野田智弘、山口保則、鈴木彩乃、山本里織、SEO JUNG-HA

 

CUE!は16人という多くのキャラを扱っていながらもそれぞれのキャラにしっかりと見せ場を作り、それでいて「声優」というテーマをしっかり描いていた作品だったと思う。この作品もまた好きな話数がいくつもあるんだけど、彼女たちの声優という仕事への向き合い方とこれからを描いた24話を選出した。

本作は声優という職業は何かという事に向きあい続けていた。これまで様々な活動をしてきたが、それでもなかなか仕事が軌道に乗らないという現実に立ち尽くす。その中でそれぞれが自分達ができる事、目指す場所を決意する様はまさしくAiRBLUEの総決算ともいえるようなエピソードだった。真咲の「声優は孤独なものよ、それぞれの歩む道は違う。例えチームや仲間であってもね。」というセリフにもあるように実際声優の仕事といっても多種多様な仕事があるという事を何よりも本編で描かれていた。自分はこの作品において、これが声優の仕事だとあえて限定的にしなかった事が美点だと感じている。中でもWindチームが語ったこれからの仕事についての語り合いは特に良かった。ラジオをやる事は声優の仕事なのか、これから続けるのかといった話が上手くまとまらず結局続けようという決断に至る。報酬はなくとも、自分達がこれまでやってきた事はこれなのだから続けたいと語る様は仕事への誇りでもあると感じた。また、聡里との会話で舞花が放った「道が違っても、帰る家が一緒なの、なんかいいっすね。」というセリフは仕事の内容は違えど、ともに同じ仲間として声優という仕事に向き合い続けてきた彼女らを指し示す良いセリフだった。

EDにはミライキャンバスが流れ、彼女らの旅路を応援するかのような選曲。それぞれが自分たちの未来に向かっていくという、この作品におけるこの上ないラストだった。だからこそそういった方向を示してくれたCUE!というコンテンツが畳むことになってしまいアプリゲームも開発断念に至った事は本当に残念だったが、それだけにCUE!アニメは良い作品だったと思う

 

 

 

アニメ、やっぱりすごい

 

ヒーラー・ガール 歌唱7 「文化祭満腹サプライズ」

脚本:木村暢

絵コンテ・演出:入江康浩

作画監督:青野厚司

 

ヒラガは本当に1クール通して色んな楽しさや良さが詰まったアニメだった。7話は文化祭を楽しんでいたかな達が、飛び入りで文化祭ライブを披露する事になるという回。この回、なんとOP映像でED曲が使われている所から始まる。OPでED曲を使う演出自体は過去に見た事があったが、ラストでの使われ方は全然想像がつかなかった・・・かな達がお店を手伝ったり、麗美が師匠と2人で(!)模擬店を回ったりと文化祭の描写が嬉しい。模擬店の食べ物を全部食べつくすと意気込むソニアを始め、彼女たちも時には他人の命も扱う果敢なヒーラーとして以前に一介の少女である事を感じさせる。そして何より、模擬店を手伝うメイド服のかなが可愛い。自分もメイドさんが大好きです*1なので・・・

サプライズでバンドをやる、という話が出た時に最初は師匠がやったら良いんじゃない?という話も出るが、師匠があなた達がやるべきだと背中を押してくれるのは師匠らしくて良い。そしてかなをボーカルに迎えた文化祭ライブはイメージ空間(?)の映像も相まって迫力のある最高のライブシーンだった。「よーし、2曲目、いっくよー!」からのED入りで(ED映像をバックに)OP曲である「Feel You, Heal You」が流れるのは視聴者へ向けた、まさしくサブタイトルに見合うサプライズ演出でニクいな~~と思わされた。

アニメーションの嬉しさに溢れていた回。ヒーラー・ガールは人命の重さ、ヒーラーとしての過酷な部分を描く一方で楽しい回もあり、運動会回(3話)をはじめその他日常回もすごく印象的だった。この作品のテーマはバンドをやる事ではないしそもそも彼女達が目指しているのはヒーラーだけど、その中で今だけしかできない「文化祭ライブ」をやってくれたという事に惹かれた部分も大きいのかなと思う。

 

阿波連さんははかれない 第10話「キャンプじゃね?」

脚本:吉岡たかお

絵コンテ:山本靖貴、山本里織

演出:牧野友映、矢野孝典

作画監督:友田美智子、山本里織、星和伸、高木啓明、長田雄樹、寒川顕一

 

失礼ながら正直、放送前はよくある〇〇さん系*2のやつでしょ、みたいな事を思ってしまってた。完全にナメてた。変な妄想ばかりしているライドウくんと距離のはかれない阿波連さんとで進むラブコメ作品。ライドウくんの「〇〇じゃね?」といったツッコミが妙にツボってしまう。そんな阿波連さんだが、大きく驚かされたのがこの10話だった。

10話は阿波連さん達がキャンプをするが、そこで阿波連さんは夜テントの中で大城さんにライドウくんへの告白を決意していると伝える。地味な描写だが、寝床に入ったライドウくんの「枕が変わって眠れなくね?」というセリフも本人の繊細さが表れていて良い。ずっと2人を見てきた大城さんが、勇気を出す阿波連さんを応援する様はどこか切ない表情だった。そして大胆な行動を取る阿波連さんが涙目に帰ってくる所を大城さんはテントから見届てしまう・・・という話。この作品を見ていた時はこれまでの阿波連さんとライドウくんの(9話までの)関係や日常が勝手にこのまま続いていくものだと思ってしまっており、こういった変化の描き方にかなり驚かされてしまった。それこそ距離感がはかれていなかったのはこっち(視聴者である自身)の方だったんじゃないか、とすら感じさせたエピソードだった。一部始終を見届けていた大城さんの(あの2人何もなかったらしいよ~といったセリフに対する)「うん、そうだね、いつも通りの2人だね…」でEDに入るのも見事。大丈夫 大丈夫 いつも通りでね 内心も距離感も測れないけど…

阿波連さんは作品を通してヘンな人間でも別にヘンなままでだって良いよねっていうメッセージが伝わってきて(それは阿波連さんとライドウくんの2人だけに限らず)、そういった他者の肯定をやっていた部分がすごくすごく好きなアニメだな〜と思った。こういったラブコメ作品のアニメ化って結構作品の見せ場を描けずモヤついたりダレたまま終わったりする事も珍しくないと思うんだけど、阿波連さんは1クール描き切ってくれたのも良かった。すれ違いコメディとしてしっかりと日常を重ねた上でラブコメとしても良い作品で、本当に綺麗にまとめ上げたアニメ化だったと思う。

 

転生賢者の異世界ライフ~第二の職業を得て、世界最強になりました~ 第7話「暗殺者に狙われていた」

脚本:安永豊

絵コンテ:げそいくお 演出:後藤康徳

作画監督:李望斌

 

というわけで、みんな大好き(?)ファイアドラゴンや極滅の業火でお馴染み転生賢者の異世界ライフ。転生賢者、根は生真面目そうで淡白な雰囲気なんだけど所々はっちゃけようとしててヘンなアニメだ…と思いながら見ていたのだが一番楽しかった7話を選出。7話は基本的にシーンの使い回しが多くその上やたら間延びしたテンポなんだけど、終始楽しくなるような作りになっていて凄かった。

「救済の蒼月」に暗殺対象とされるユージだが、暗殺対象候補から外してもらうため自身が暗殺するに値しない無能だと演じる(!)回。救済の蒼月に尾行される中、わざと「大したことのないテイマー」を演じようとするが、魔物と戦うシーンが特に見所。プラウドウルフが何度も突撃し、その度に魔物にヒールを使い起こし、何度も戦闘を繰り返すという描写を同じカットの使い回しで極力節約された表現をしている。雄叫びと同時に間欠泉が沸きあがるカットまで何度も擦られては不思議と面白さすら生まれてくるので凄い。「いかんな!高評価を受けてしまった…」「評価が下がったぞ!」こんなセリフ一度は言ってみたすぎるだろ。

そしてプラウドウルフが仕留め損ねた魔物がユージを襲い、つい瞬殺してしまうシーンは必見としかいえない面白さだった。「しまった…上手く切りすぎたか?」からひたすらに暗殺者達の表情が緊迫していくカットをお出しされるシーンは、尺が長めのカットを連続するにも関わらずケレン味をひたすらに感じさせられて最高。間延びしたテンポが続くのに完全に目が人間離れしたレイアウトでむしろ笑いすら誘ってくるのは斬新だった。暗殺者ルディの「ワケが分からねぇ…!」はこっちのセリフだが・・・

 

最終的には野放しにはしておけないと勘づいたユージが暗殺者2人があっさりとスライムで倒してしまう、というオチ。その後序盤では金を持っていないフリをし一度店主の弟子に断られた防具屋に出向くが、店主が弟子に「この大馬鹿者が!!こいつらは今までの店に来た中で一番強いぞ!」と放つのも爽快。

転生賢者は他の回ではいわゆるSAKUGAシーンを見せつけるかのような回もあったが、むしろあまりハイカロリーではない作りので中で面白さを追求したテクニカルな回だった。お世辞にも十分とは言えない作画リソースの中で、これだけの楽しさとケレン味を出せるのはまさしく技ありとしか言えないだろう。

 

あとこれは完全に余談でしかないんだけど……同じシーンを擦る様はどことなくこの回の絵コンテ担当であるげそいくお氏が同じく絵コンテ・演出・作監・一人原画(二原あり)を担当したハッカドール THE あにめ~しょん9話を思い出してしまった。

 

処刑少女の生きる道(バージンロード) 第8話 「魔薬」

脚本:ヤスカワショウゴ

コンテ:大畑清隆 演出:岩崎良明

作画監督:中島駿、小笠原憂、山内則康

 

処刑少女8話も転生賢者7話に並ぶリソースコントロール、工夫で面白さを生み出した話数。どちらが上という事も決めれず両方好きだったのでこちらも選出する事にした。

話としては旅費の申請のためリベールの街に寄るという所から始まり、メノウやモモ達の魔薬の調査を通して流通背景や背後の人間が描かれる…という言ってしまえば箸休め回のような内容。(失礼ながら)おそらく普通に映像化してもそこまでは印象に残らなさそうな回だった事もあり、工夫がとても光っていた。

この話数の光る所は、連続する同じ場所での会話劇において同じカットを大胆に使いまわしながら映像として成り立たせている所だろう。本作でも定番の、メノウ、アカリ、モモのお馴染みの三角関係(?)。この話数でもメノウに駄々をこねるアカリやモモ、妙な所で再開するモモとアーシュナの関係とキャラクターのやり取りが楽しい。このアカリのいない夜の間はモモがメノウをにすり寄り、かと思えば朝になるとアカリがメノウのベッドへ潜り込んでおり…という一連の流れを、会話は変わりつつも数日に渡り同じシーンを使い回し表現している(!)。とだけ書くと一見すると視聴者側も使い回しなのか…で終わってしまいそうな所なんだけど、何度も何度も擦られていくうちに天丼的な面白さも生まれ不思議な視聴感が生まれている。とりあえず何回も擦られるスタイリッシュ起床メノウちゃん、ズル!!!!!

つまりとことん余分なカットを省かれ、下手な誤魔化しではなく編集技術により映像を作り上げるという、リッチさとは方向の違ったアニメーションの技術が光る回だった。それでいてちゃんと見れる物になっていて、一部シーンのみだとただ安っぽいとだけ思えるかもしれない演出も一つの話数の中で一貫してやると成り立つ物なんだな…と気付かされる話数でもあった。近年のJCスタッフ作品はよくクオリティにばらつきが出ており、この話数ももしかすると予算や人員の問題等による苦肉の策かもしれないが……こういった省エネ的かつ楽しめる映像にできるのもアニメの上手さだと思ってるのですごく面白いな〜〜〜と思う。

 

よふかしのうた 第10夜 「盗撮画像を拡大して見る」

脚本:横手美智子

絵コンテ:宮西哲也 演出統括:宮西哲也 演出:関野関十、駒田由貴、友田康、本間みなみ、安川央理

作画監督:山道致威、西道拓哉、山本恭平、和泉百香、梅田香、片田敬信、斎藤梢、内藤伊之助、大原大、鈴木良子、鈴木彩子、佐川遥

 

Creepy Nutsとのタイアップ曲でも話題になったよふかしのうた。夜の描写が煌びやかで「よふかし」の背徳感や気持ち良さにスポットを当てていた本作だが、10話がすごく印象的だった。ナズナがミドリに頼まれメイド喫茶でバイトするが、アリサの盗撮の件を知り犯人探しをする回。

結局その犯人はアリサ本人であり、アリサが他のメイドより目立ちたい、承認欲求を満たしたいという動機からの行いだったというエピソード。コウくんが盗撮にパンチラがない(ので意図的な撮影である)からと解決に導くのは男子中学生っぽくて良い。

ミドリの「人間なんてみんな病気だから。それと付き合うしかないよね。」というセリフが刺さる。コウくんをはじめ軒並み社会から外れたキャラクターばかり登場する本作で、別に病気だっていいという自己受容と他者の肯定に繋がるのがとても良かった。誰だってその人の中に病気を飼っているというメッセージはすごくこの作品らしいし、だからとアリサを咎めないのは優しさとも感じる。アニメにおいてメイド喫茶を舞台にした、あるいはメイドが登場する回はいくつも存在するけど、こういったメッセージの描き方はちょっと意外だったようにも感じたり。

阿波連さんでも感じたけど、「おかしい、ヘン」とされる(見られる)事に悩む人間に対して、その在り方も別にいいよねっていうお話が自分は割と好き…なのかもしれない…と書いていてちょっと思った。

 

Extreme Hearts 第9話「SNOW WOLF」

 

脚本:都築真紀

絵コンテ:細田雅弘、吉田徹 演出:細田雅弘、いたがきしん

作画監督:吉田智裕、西田美弥子、宮地聡子、久松沙紀、アルベルト・キエ、石井ゆみこ、ENGI プロップ作監:岩畑剛一 アクション作監:吉田徹、板垣伸

 

様々な良さや嬉しさの詰まっていたExtreme Heartsから、中でも一番好きだった9話を選出。陽和のミシェル、アシュリー2人との出会いからRISEとSnowWolfの対戦を描いたエピソード。河川敷で出会ったミシェルの演奏についうっとりする陽和の描写が嬉しい。試合においてメンバーが少ないチームが不利になる一面もあると作中で語られていたが、それはRISEに限らず2人とその他プレイヤーロボで戦ってきたSnowWolfもだろう。本作はチームの一人としてロボットがメンバーとして共にスポーツを行う事があるが、RISEと同じくSnowWolfも(ただの人数合わせとしてでなく)プレイヤーロボを同じチームの仲間として信頼しておりすごく好感の持てる描写だった。その他食費の厳しさに共感してしまったりと、どこか似かよった所のある陽和と2人の掛け合いは見ているこちらも笑顔になってしまう。

そしてついに戦う準決勝、互いに負けられないと意気込む両チームの試合はとてもアツいゲームを繰り広げていた。バレーのアクションの見せ方も上手く、特別作画が動きまくるわけではないが構図の良さが光っている。惜しくも敗れたSnowWolfだったが、全身全霊で打ち込んできたミシェルにとっては今ここにしかない、本当にかけがえのない物だと言うようにゲームに向き合っていた。最後に手を交わす日陽とミシェルは本当に眩しい笑顔で、出会いから決着までを1話でテンポ良く描かれた隙も無駄もない回だった。

本作のいくつもの魅力の中でも、自分としては特にキャラクターの描き方がすごく好きになれた部分だったのかなと感じている。また本作の設定はホビアニのようなぶっ飛んだ物のようでもあるが、身体にハンディキャップを抱えた人がスポーツを楽しめるといった様なハイパースポーツの意義を持たせていたのもすごく良かった。放送時の本編と同期・再現したブログの更新やS×S×Sによる本編の補完も含めとても楽しませてもらい、まさしく2022夏クールを代表するエクストリームなアニメだったと思う。

 

うる星やつら 第10話「戦慄の参観日/君去りし後」

脚本:柿原優子

絵コンテ:大原実 演出:常岡修吾、藤本ジ朗

作画監督小林亮、平村直紀、森幸子、福島豊明、三浦春樹、今田茜、三橋桜子、中山和子、藤澤俊幸

 

自分は旧作や原作を知らずに見始めたんだけど、このうる星やつらとかいうアニメ、本当に登場キャラクターが徳の低い奴しかいない!!!!!どいつもこいつも徳の低い奴ばっかりだし、だからこその安心感(?)というか良さを感じていて、ドタバタコメディとして楽しく見れてるな~といった作品。本作はいわゆるリブート作品だが、OPEDの今時らしいシンガーの起用や現代らしいオシャレな色使い等と令和らしい作品に仕立てられている。またキャラデザに関しても、原作(や当時の)デザインの良さを残しつつ今の時代でも親しみやすいようなデザインに上手く落とし込まれていると感じる(これに関しては、同じく浅野直之氏がキャラデザを担当した2017年版「魔法陣グルグル」のデザインが個人的にかなり好きなのでそれもあるのかもしれないが…)。そしてその中で自分が最も好きだったのがこの回。本作は基本的に1話につき2、3本立てでこの話数もAパート「戦慄の参観日」とBパート「君去りし後」で構成されている。

まずAパート「戦慄の参観日」は、あたるやラム、面堂はじめクラスメイトの親が授業参観に来るという話。面堂の母親が牛車で登場したりラムの母親が宇宙から宇宙船で来たり…といったいわゆるいつも通りのドタバタした「うる星やつら」。余談だが放送版では、ラムの母親が喋っている鬼族語を副音声に切り替える事で日本語吹き替えで再生されるといった凝った事も行われたとか。あたるの「俺の出番、これだけ!?」を途中でブツ切りにして終わらせるのもまさしく「うる星やつら」らしいオチ。

そしてBパート、「君去りし後」がすごく心に残るエピソードだった。

いつも通りバカな事をやり他の女の子にうつつを抜かし、ラムを適当にあしらうあたる。ラムはあたるが心配だというが、その日の夜を最後にラムは姿を消してしまう。毎朝乱暴に起こされ電撃をくらわされ迷惑だ、といっていたあたるは朝起こされる事も電撃をくらう事もなく日常を送る。ラムの残していった小さなラムの人形を、あたるが胸ポケットに入れて出歩く描写が物寂しい。コメディばかりだった本作において、ラムが突然消え、ラムを探して走り回るあたるのシリアスな描写はこれまでには無かった雰囲気が漂っていた。オチとしては野暮用によるラムの一時的な帰省・・・という話だったが、ドタバタな日常の中で今目の前にあるものが大切だと描かれる描写には、(それ以前にも楽しんではいたけど)思わずこの作品を見直さざるを得なかった。枯れ葉が舞う中ラムが戻ってくる演出は、冒頭での来週には紅葉が訪れるだろうという話からの繋がりとともにそれまでに経った時間を表していた。つい涙目になるあたるの姿も印象的で、美術や演出の良さも相まってキャラクターの繋がりを感じるとても良い回だったと思う。ストーリー自体は古典的ともいえるが、Aパートではいつもらしい描写を描きBパートで失って気付く日常を描いてくるのが凄く印象的だった。

言ってしまうと、放送前は令和にリブートか~~みたいな気持ちで見てしまっていた所は否定できず、それでも見ていくうちに徐々に好きなっていけた作品。やっぱりアニメとかいうの見てみないとマジで分からんな…とも思ったり。

4人はそれぞれウソをつく 第11話「さよなら大佐」

脚本:清水恵

絵コンテ・演出:星野真

作画監督:田内亜矢子、吉田翔

 

4人がそれぞれ大きなウソをつき、その中で日常が重ねていく本作。1話時点だと丁度良い日常コメディだな〜くらいの気持ちで楽しんでたんだけど、すぐに考えをひっくり返された。ハチャメチャなコメディをやりながらお話の積み重ねもしっかりやっていて、繊細さと力技が両方あるような作品。

11話は最終回にして4ウソの凄さが詰まった話数。OPでエアバンドをやるアニメは名作!どころか最終話でSE付きOPのアニメにまでなるのやりたい放題すぎる・・・まずAパートは千代の試験合格のため4人で勉強会をする、というエピソード。リッカが頭が良くなるよう仕向けるが、リッカによってIQが高くなりすぎた千代はリッカの隠している事に勘付いてしまう。慌ててリッカがIQを元に戻し、その後なんやかんやで千代は進級試験を合格するといった話。しかしBパート、自分だけは進級はできず卒業式だ、と言うリッカ。リッカは本当は宇宙人であり、本当はここにいてはいけないとその場から去ってしまう。そしてそこで翼(剛)が自分も同じだからリッカの気持ちがわかると言い、自身が本当は双子の姉の翼ではなく弟の剛であるという事を明かすこのシーン。この話数の一つ前、10話で翼(剛)は4人にとっての翼、つまり翼と偽った剛という存在は4人の中にしかない事を突き付けられ、この関係性の中で剛の居場所は本当にあるのだろうかといった話を描いていた。だから翼(剛)の告白が、「まあでも正直あんまり驚きはないですね、ウソついてるのはみんな同じですし」で流されたのは笑っちゃうような泣いちゃうような不思議な感覚に陥ってしまった。でもやっぱり剛の居場所がちゃんとそこにあったという事は嬉しかったり・・・次のセリフで千代さんに至っては「そんな事より、」なんて言い出しをしていたが、そこに確かに「剛」という人間が存在するのであれば「そんな事より、」なのかもしれないなとも思った。そして、「秘儀!ただのジャンプ!」で旅立とうとするリッカの宇宙船へ乗り込む3人。大事なのはリッカの気持ちだと言い、説得されたリッカは地球へ戻る事を決意する。中でも特に、自身のウソを明かした剛から「俺たちみんなウソついてたけど、友達なのはホントでしょ!」というセリフが出てきたのは嬉しかった。

そしてラストの宇宙船の爆破に「すべてを元通りにするには…これしか…!」からの時間の巻き戻り(!?)、ED映像の見事な伏線回収はただただ驚いてしまった。EDの左に回る時計の秒針がタイムリープオチに繋がるのはそんなのアリかよ!!!とも思ったが、最後までこの作品に振り回され中々に4ウソらしいオチだったと感じている。また、巻き戻る前最後に剛は(本当の事を告白してしまったため)もし助かっても俺は…と言っていたが、時間が巻き戻らなくてもそこに剛の居場所はちゃんとあるんじゃないかと思わせてくれるような、そんな気がした。

4ウソはタイトル通りみんなが何かを隠し演じ、その中で「ウソ」によって成り立つすれ違い、コメディ、そして居場所のお話とこれでもかというくらいテーマを上手く描いていたと思う。4人の関係と日常がずっと続いてほしいと思ってしまうような、本当に素晴らしいアニメだった。

画像

(11話アイキャッチより)

 

夫婦以上、恋人未満。第7話「花火以上、抱擁未満。」

脚本:荒川稔久

絵コンテ:山元隼一 演出:内沼菜摘

作画監督小林千鶴、乘田拓茂

 

何パーセント好きくらいを恋と言うのかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

年間通して様々なアニメを見てきたが、個人的に一番アニメーション〜〜〜という感情(?)にさせられた作品だったら「夫婦以上、恋人未満。」だと言える。生徒を擬似夫婦として生活させる夫婦実習というトンデモ制度の中で物語が進むラブコメ作品。エッチな描写がありつつも演出に気品さがあってやたらと画面が良い。ビビッドな色使いに背景がオシャレなこのアニメーションに自分はアニメコイン*3を全ベットしたくらいにはなぜか1話時点から強く惹かれていたんだけど、とにかく凄い作品だった。

7話は星が天神との繋がりを得るべく花火大会へ参加するが会えず、その後星は詩織と帰り道を歩く天神を見て勘違いをしてしまうといった所から関係性を描いたエピソード。つい立ち止まる星に、金魚すくいをしていた男子グループのすくいからこぼれ落ちていく金魚を重ねた演出はつい息を吞んでしまう。次郎が着せてくれた着物で天神に会うと決意する中、次郎が好きなのは詩織なのだから自分は天神を好きになるべき、だけどと星が葛藤する様はこれまで以上に心の整理ができていない星の心情を描いていた。これまで星の心情の描写が少なかった事もあり、揺れ動く気持ちを印象付けた回だった。家に残った次郎が星と天神が上手くいけば自分との関係はもうクラスメイトでしかない、とこぼすのはこの作品ならではの歪な関係性が表れている。
そして結局泣いて戻ってきてしまった星が次郎とベランダから花火を見上げるシーン、2人専用とばかりに盛大に打ち上げられた花火がとても良い。特に特徴的だったのがこの2人を鏡で写したカットで、ここは本当に唸ってしまった。

あえて鏡面へカメラを向け、それを利用し2人だけをフォーカスする映像としての上手さ、それももちろんなんだけど鏡に映った物は実際にそこにはない偽りであり、そして夫婦実習の中での夫婦もあくまで偽物の夫婦、それをここに重ねていたんじゃないかと自分は思った。このカットはアニメオリジナルの演出で、こういった小物を使った演出は他話数でも見られるんだけどすごく上手いな〜〜と思わされた。

そして次郎が最後に放った、「一生を誓うのが夫婦なのに、俺たちに来年はなくて、べランダから見える小さなこれが、きっと最初で最後の、一緒に見上げる花火だ。」というセリフが夫婦実習という狂った制度が生み出した儚さを物語っていた。夫婦実習なんていう狂ったシステムの中でお話を進めているのに、ついキャラクターの思いや関係性に引き込まれるという不思議な感覚に陥ってしまう。本作はそういった不思議な魅力のあるラブコメ作品だった。

正直、未完結ラブコメとしてのこの作品のアンサーである12話とでかなり迷ってしまったんだけど、やはり単話としてだったらこの話数かなと思いこの7話を選出した。でも第12話「以上、恋愛未満。」も一見するとシュールに見える締め方なようで完全に魅せられた話数だったという事もここに書いておきたい。本作もまた、ただ原作の良さを映像に出力できているから良いというわけではなくアニメならではのアレンジ・アニメならではの演出が詰まっている作品でありこういった形のアニメ化は個人的にすごく評価したいなと思っているところもあったり。

宇宙規模で騙した今を俺も愛してみたいぜ・・・・・・・・・・・・・・

 

最後に

自分的に2022年は今まで以上にアニメを見ていた年になった気がします。こうやってエピソードを選出し振り返ると結構クールが偏ったり後半話数の方が多くなってしまい、バランス良く選出するのもムズいな~と感じました。またこれを書くにあたって自分の優柔不断な所が出てしまい中々10選に絞り込めず、結局14作品分書いたあと10選を最終的に絞り込むというあまりに効率的でないやり方になってしまいました(惜しくも削った4本のタイトルはあえてここには書きません)。

2021年の12月末~2022年の1月あたりにも恒例の10選記事を上げている方がいたと思うのですが、その時に自分もこういった記録を残しておけば良かったかな~と思いつつ結局やらず少し後悔が残っており、1年越しに一応は書けてまあ良かったのかなという感じです。今年の分も書くかは分かりませんが・・・何はともあれ、今年もアニメ見たりごちゃごちゃ言っていきたいと思います。それでは。

 

*1:ヒーラー・ガール 歌唱8「メイドさんが大好きです・クビよ」より

*2:ここではタイトルに「〇〇さん」とついた日常・ラブコメ系統の漫画作品や漫画原作アニメの事を指す。漠然とした括りであまり良くない書き方なんだけど上手く言い換えられないのと長くなるのでここでは許してほしい

*3:Twitter上の一部の人達の間で流行っている、そのクールのアニメ作品に架空のコインを賭ける遊び?みたいなやつです